IKKIをもうちょっと考えてみる(IKKI読んでる、読んでた、読んだことある人向け)

創刊から読んでる自分には、なかなかIKKIを外から眺めることができず、「なんでIKKIを買うのか」という部分を説明することは難しい。つまり、他人がIKKIを買う動機というものを考えてこなかったとも言える。例えば、これが、自分が毎月購読していないアフタヌーンであったら話は別だ。買う時は毎回「〜〜があるからアフタヌーン買お」と思っているわけで、逆に言えばその「〜〜」の部分が動機であり、そこを分析すれば、少なくとも自分にとってのアフタヌーンの魅力というものを浮き彫りにすることはできるだろう。しかし、もはや習慣的に購読しているIKKIには、毎月「面白い、面白くない」はあるものの、「買う、買わない」という判断はない。そこで「IKKIの売りってなによ?」ってことをキチンと考えねばならないってわけだ。


自分なりに感じているIKKIの1番面白いところは、「雑誌を作っている側の思惑を覗く」という楽しさだ。こんなこと言うと元も子もないが、作品の面白さだけで較べたらアフタヌーンの方が面白いということに反対する人はそうはいないんじゃないだろうか。リアルでもネットでも「IKKIはこれだけのメンツを集めといて、なぜあの程度なのか」といった意見をよく耳にする。単行本の売れ行きもアフタヌーンの方が倍近く上だ。それでも、僕はアフタヌーンではなく、IKKIを購読しているし、今後もそれを変えるつもりはない。その理由は、連載作と読み切りのバランス、及び連載の中でも続きもの*1と1話完結ものの割合にあるように感じる。アフタヌーンは連載の中でも続きものが多く、IKKIはそれと比較して一話完結ものが多い。ハッキリ言って、これ系の月刊誌で物語を来月まで覚えておくのは相当に骨が折れる。もちろんその作品自体の面白さという要素は大きく影響するが、込み入った人物関係やストーリーを持つマンガを雑誌ベースで読むには、月刊誌では5作くらいがちょうどいいところなのではないだろうか。アフタヌーンを購読することは、自分にとって負荷がかかりすぎるのだ。


つまり、月刊誌自体を売る場合は、求心力のある続きものストーリーマンガ、前回の内容を忘れてもいい1話完結のマンガ、その月しか読めない見逃せない読み切りの3つのバランスが重要になってくる。(なんだかんだ言って、僕がコミックビームを1番好きな理由もここにある。)個々の作品の内容の話を抜きにして言えば、このバランス感覚こそが紙面に変化を生み、雑誌にライブ感をもたせる最も重要な要素になっている。ほとんどの作品が単行本化される今、あえて雑誌自体を購入させる理由として、このライブ感というものは欠かせない。


話をIKKIの良いところに戻そう。IKKIはこの手の雑誌のなかでは一番歴史がないこともあり、「この作品を読むために買おう」と思わせるような作品数が明らかに足りない。メディアミックスも今のところ無いし、一般的に考えれば外部へのアピールに欠ける雑誌であると思われる。しかし、そうした状況を逆手にとり、IKKIがとった手段は、最後発である点を活かし、少し注目されるようになった作家を積極的に外部から引っ張ってこようというものだ。このチョイスには編集者の視点というより、マンガ読みの視点の方が強く現れていたことが後の苦しみを生むのだが、これにより、そうした作家についてくる固定ファン層を取り込んだことはもちろん、次第に「お、この人なんかはIKKIで描きそう」という読み手のIKKI像を成立させてきたことは何より特筆すべき点に思われる。すなわち、ここで作り手の思惑と読み手のIKKI像が重なったことで、その結びつきが非常に強まり、雑誌を購読させる原動力となっているのだ。このIKKIっぽい*2という感覚こそがIKKIの最大の売りであり、この感覚を共有する集団を拡大することこそがIKKIが目指してきた方向だと思われる。


その狙いはここまで、大方うまくいった。しかし、そのために機動力ばかりを重視するハメになり、肝心の軸となるべき続きもの作品の内容に関するウェイトが軽んじられたことが、現在の「あれだけ書き手を集めてコレか」という感想に繋がっていると思われる。これからのIKKIの課題は結局は「話題性を保ちながら、いかに続きもの作品のクオリティを上げていくか」という基本的なことにあるんじゃなかろか。未だに夢中になれるストーリーものが無いんだもん。あ、「セクシーボイス&ロボ」があったっけ。多分、二度と始まらないけどね。


ま、今日はこんなところで。こういうのを一人で書くのはやっぱ向いてないな。誰かに話せって言われたら、いくらでも滔々と話し続けられるんだが。


余談。初期のIKKIといいファウストといい、編集者がやりたいことをやる系の雑誌には、なぜあんなにも自画自賛っぽさが色濃く現れてしまうんでしょうね。ああいう雰囲気は苦手だわ〜。

*1:「続きもの」をどう定義するかってのは難しいんだけど、キャラクター性よりもドラマ性を重視している作品ってことで。

*2:IKKIっぽい」という感覚は何かってことは意図的に避けてます。まぁ、なんとなくわかるでしょ。というより、このなんとなくわかるって感覚がIKKIっぽいのです。