はしがき

人間を信じきっていない彼は笑う。傍らには、人間を完全に信じきったかのように笑う女の子。彼女の瞳の中の彼は、人間を信じきったかのように笑う。彼は、彼女と彼女の瞳の中の彼に聞く。どうすればそんな風に誰かを信じることができるのかと。彼と彼女が応える。永遠を信じないことだと。誰も彼も、西日の中では寂しそうに見えた。


このところのお気に入り。いしいしんじプラネタリウムのふたご」、Steve Reich"Different Trains/Electric Counterpoint"、De Marinのメッセンジャーバッグ


いしいしんじは裏切らない。良い意味でも悪い意味でも。いしいしんじは最良の時に不幸の種を隠す。しかし、不幸の中に光を埋める。僕たちは物語に身を委ね、舟のように揺れるそれにすべてを任せればよい。誰かの口から、いずれ思い出すことになるような台詞が零れるのを待ち、それを全身で受け止めればよい。それは本当に素晴らしい体験だ。


Reichもまた、川のようなものだ。押し流されて行く。形を変える。残るものはみな、磨かれている。