島田虎之介「東京命日」

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私が新人で注目してるマンガ家ベスト3の一人、島田虎之介の2冊目の単行本。小津安二郎の命日である12月12日を軸に、おそらく3年前後を描いている。ここで「おそらく」というのは、その物語構成が時間をぐちゃぐちゃに切り刻んで再編集されているからだ。一本の大きな物語の時空とそこに関連する人々の小さくて大きな物語の時空が複雑に絡み合うという手法は、映画「パルプフィクション」のアレっぽいと言えばピンと来ると思うが、「パルプ〜」よりもその複雑さは数段上で、とてもじゃないけど連載じゃあ何がなんだかわからなかったことだろう。このズレた時間がもたらす幾重ものカタルシス。じっくり読める作品。


だけど、かってに時間を組み立て直してみる。ネタバレですよ!

X-2年12月ー薮、ストーカーを突き落とす。


X-1年1月ー薮、嫌がらせを受け、ストーカーの亡霊が現れる。


X-1年4月ー小林、CM制作会社に入社する。


X-1年5月?ー小林、青沼と初のプレゼン。安土と初めて会う。プレゼンに敗れる。


X-1年6月ーとっちんが死ぬ。


X-1年6月19日ー小林、ドキュメンタリーを撮り始める。


X-1年夏ー青沼とともに逗子芯太の墓参りに行き、安土に会う。次の日、青沼退職。


X-1年夏ー消防士竹田、安土によって人生を悩む。映画を借りに。


X-1年夏ー名古屋で台風による水害。青沼死亡?知らせを受けた安土、パクることを決意。


X-1年12月10日?ー安土の父死亡。安土帰郷し、葬式。


X-1年12月12日ーストーカーの墓に訪れた薮、ドイツ人から小津のことを知る。安土、東京へ帰り、その晩に薮をナンパ。同時刻、小林、安土のパクりを知る。


X-1年12月13日ー未明に小林、安土を殴り、薮を連れ出す。安土、お台場で種を蒔く。その様子を戸田ナツ子が目撃。その後安土は警察に注意され、消防士の元へ。小林、サンプルCDを催促される。戸田、その晩に恋人にプロポーズされる。


X-1年12月13〜20日の間ー戸田、友人に恋の相談。その後、自らの出生の秘密を知る。CD屋で、ケイト・ブッシュを買いにきた小林とすれ違い、ケーキを買いにホテルへ。


X年夏ー消防士竹田、再び映画を借りる。同日、薮、小津「長屋紳士録」を見る。


X年夏ーお台場に向日葵が咲き、ナツ子、消防士となった安土に出会う。


X年12月12日ー小林清、小津の墓を訪れる。同時刻同場所で藪ケイト立ち直る。

こうして見ると、レンタルビデオ屋で薮と竹田が会ったときの時間が非常にわかりづらい構造になっている。ここだけ、転換が無く時間がずれているのかな?